佐々木善三氏は、東京地検特捜部では、真面目で几帳面な性格で、上司からの指示どおり、大変粘り強く捜査・取調べを行うことで、「マムシの善三」などとも呼ばれていた。
今回の調査でも、舛添氏側から依頼されていた事項については、依頼どおり「必要な調査」を行って、その結果を調査報告書にまとめて提出したものと思われる。
その調査結果が、上記のような内容だということは、舛添氏の依頼の趣旨が、そのような「違法性の追及」を含まないものだったからであろう。
正月の家族旅行の際の「会議」の有無について事実解明を行おうと思えば、「出版会社の社長」の聴取が不可欠だが、そのような「舛添氏や事務所関係者」等以外の「第三者」に対する調査は舛添氏の依頼からは除外されていたということだったのではないか。
しかも、「ホテルの客室で出版会社の社長と話をした」という説明は、話週刊文春の報道後、疑惑について「精査する」と繰り返し述べた後の5月13日に、都知事定例記者会見で舛添氏が説明した内容とも異なる。
この会見では、舛添氏は、「事務所関係者らと会議をした」と説明していたはずだ。今回の調査報告書での舛添氏の説明では、「事務所関係者」は消えてなくなり、「出版会社の社長」だけとの会談だったような話になっている。
秘書等の「事務所関係者」であれば、当時の行動を記録する資料の提出を求めることは容易なはずだ。携帯メールのやり取り等を確認すれば、実際に、秘書等が家族旅行の際のホテルに赴いたか否かの事実確認もできる。
ところが、舛添氏から「出版会社の社長がやってきて話をした」と説明され、「第三者に対する調査は対象外」だとなると、それ以上の事実解明は不可能だということになる。
しかし、もし、舛添氏の依頼が、第三者にはヒアリングしないというものだったとすると、調査は、自らの政治資金についての重大な疑惑に対して、「厳しい第三者の目」で事実を明らかにすることなど全く想定しない、まさに「都民の目を欺くための調査」だったということになる。
舛添氏は、いったい佐々木弁護士らに、どのような調査を依頼したのか、その依頼の中に、事実解明に必要な「第三者」の聴取を行うことが含まれていたのか。調査を依頼した舛添氏自身が、これから始まる都議会での質疑の中で、しっかり説明すべき事柄だ。
とはいえ、仮に、舛添氏からの依頼事項が限定されたものであったとしても、今回の調査は、「元特捜検事による厳しい調査」にしては、追及が余りに手ぬるく、大甘だったことは否めない。
正月の家族旅行での「会議費」問題について、5月13日の会見での「事務所関係者らと会議した」という説明が、「出版会社の社長」と話をしたという説明に変わった「理由」について、なぜ舛添氏を追及しなかったのであろうか。
そして、さらに疑問なのは、「違法ではないが、不適切」という言葉が繰り返される中で、その「不適切」の中身についての追及が全くないということだ。家族旅行等の費用を政治資金で支出していたことについて、舛添氏は「意図的な公私混同」であったことを認めているのか、それとも、秘書が政治資金の処理を誤ったという弁解を続けているのか、については全く触れられていない。
東京地検特捜部時代には政治権力に対する捜査で「マムシの善三」という異名をとった佐々木氏だが、小渕優子氏の政治資金問題での第三者調査等を行う中で、権力者側から便利に使われる「元特捜検事」になってしまったということなのだろうか。
引用:舛添氏は、佐々木弁護士らに、いったい何を依頼したのか | 郷原信郎が斬る
2016年6月7日火曜日
郷原信郎弁護士のブログ→ ”権力者側から便利に使われる「元特捜検事」になってしまったということなのだろうか。”
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